国内人権問題で強気なカンボジア、関税優遇措置撤廃を検討するEU

EUが人権課題を理由に関税優遇措置の停止を警告する中、EU輸出に頼るはずのカンボジアの頑なな姿勢が目立ってきた。

最大野党だった救国党元党首で、自宅軟禁中のKem Sokha(ケム・ソカー)氏について政府は4日、国王の恩赦(フン・セン首相の推挙が必要)により軟禁を解かれるかどうかは進行中の裁判次第、というコメントを出した。ケム・ソカー氏の前に党首だったSam Rainsy(サム・ランシー)氏はフランスからケム・ソカー氏の釈放を訴え、カンボジアがメンバーでもある列国議会同盟(本部スイス)も同様の決議をこの10月に出したところ。カンボジア政府のコメントは、こうした「外圧」に一貫して抵抗する姿勢を堅持する狙いがあり、列国議会同盟からの脱退もほのめかしている。発表のタイミングも、国連人権理事会が派遣した特別報告者Rhona Smith氏がカンボジアに調査滞在中を狙ったもので、意図的にカウンターを打ったことになる。

返す刀でSmith氏も8日プノンペンで会見を開き、ケム・ソカー氏への釈放など多くの人権課題の解決を求めた。

一方、この直前の2日に政府は、ポルポト政権時代の悪名高いTuol Sleng(トゥールスレン)収容所付き写真家として映画の題材にもなったNhem Eg(ネム・エン)氏が申請していた政党Prosperous Laboreres Party(繁栄労働党)について、結党を認める発表をした。トゥールスレン収容所(別名S-21)には1970年代、2万人近くが収容され、生きて還ってきたのは8人とされる。映画「The Conscience of Nhem En」(2008年)は、このうち3人の生存者にインタビューした短編。ネム・エン氏は収容者の顔写真の撮影などをしていた。その後の氏の素性は、あまり公になっていない。

人権施策のチグハグ感は否めず、しかし、EU関税優遇措置を失えばその影響も大きい。カンボジアからEUへの輸出額は62億米ドル(2016年)余りで、輸出総額の約半分を占める。特恵関税の地位を失えば、支払うことになる関税は6億7600万米ドルに上る。GDP 222億米ドル(2017年)規模の国には打撃だ。カンボジア国内に多くの生産拠点を構える欧州企業にとっても、政治の方向感は重要な戦略決定ファクターになっており、今後ますます注目を浴びるだろう。

(Hummingbird Advisories  佐藤 剛己)