マティス米国防長官の来越と活動家の釈放

ベトナムの女性人権活動家グエン・ゴック・ニュー・クイン氏が1017日、釈放されて米国に送還された。クイン氏釈放は、マティス米国防長官によるベトナム訪問と重なったことからそのタイミングが憶測を呼んでいる。

マティス長官は17日、米軍がベトナム戦争中に枯葉剤を保管したホーチミン市郊外にあるビエンホア空港を訪れた。米国は39,000万ドルを投じて同空港の土壌汚染事業を来年初めにも開始する予定で、マティス長官はゴー・スアン・リック国防相に「同事業を国防省が支持し、米国が約束を果たすことを見せるために来た」と伝えた。クイン氏釈放のニュースは、マティス長官がベトナム出国直後に流れた。

クイン氏釈放のタイミングについて米国防省もベトナム政府も言及していない。ただ米国が負の遺産の清算に改めてコミットした日に、米政府が以前から求めてきたクイン氏を釈放したことは単なる偶然とは考えられない節がある。

クイン氏は「マザー・マッシュルーム」の名で広く知られ、政治や環境問題をブログを通じて発信してきたが2016年に逮捕され、20176月に「反国家プロパガンダの流布罪」で禁固10年の判決を受けた。だが同年3月にはメラニア米大統領夫人主催の「国際勇気ある女性賞」を受賞しており、米政府は早くからクイン氏の拘束を問題視していた。

クイン氏は、釈放されて米国に移住することになるという見通しを、今から3か月ほど前の724日に在ベトナム米大使館の職員から伝えられたと、米到着後に語っている。米越は数か月前にクイン氏解放で合意し、タイミングを探っていたことになる。

マティス長官のビエンホア空港訪問は、米越関係の改善を印象付け、中国に対する牽制となる。ベトナム政府はクイン氏釈放により人権への配慮を示した。グエン・フー・チョン党書記長による国家主席兼務という異例の国会人事を翌週に控え、対米関係を引き続き重視する姿勢を示した。チョン書記長は年内にも訪米するとの観測もあり、その地ならしにもなる。一方、米国は、トランプ政権が引き続き世界の人権状況に関心を持ち続けていることを示した。

唐突に見えた釈放劇は、両国の利益を周到に計算した外交の帰結だったと考えられる。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)