クアン国家主席が死去、焦点は後任人事に

(9月25日掲載の日本語版です。)

ベトナム共産党序列2位で国家元首のチャン・ダイ・クアン国家主席が921日、ハノイ市内での病院で死去した。ベトナム政治の焦点は早くも次期国家主席の後任人事に移っており、現段階ではチャン・クオック・ブオン党書記局常務とホーチミン市党委員会のグエン・ティエン・ニャン書記が有力視される。さらに党序列1位のグエン・フー・チョン書記長が国家主席を兼ねて中国式に党と国・政府を一元的に掌握するとの見方も出ている。

(26日に暫定国家主席指名されたダン・ティ・ゴック・ティン(副国家主席)は、あくまでも暫定としての就任。政治局員でもなく、そのまま正式な国家主席になることはないと見られる。)

ブオン常務は20161月の党大会で最高指導部の政治局に入った。党中央検査委員長としてチョン書記長が進めるベトナム版「トラもハエも叩く」反汚職運動で実績を上げ、病気のディン・テー・フイン氏に代わり書記局常務に20183月に就いた。チョン書記長の政敵であるディン・ラ・タン前政治局員のペトロベトナム会長時代の不正摘発に成功し、ベトナムの「王岐山」とも言われるチョン書記長の右腕だ。

一方のニャン書記はドイツと米国に留学歴がある国際派の研究者だが、政治力を疑問視する声もある。派閥的にも中立で、タン氏の失脚に伴いホーチミン市書記に就いたのも権力闘争の末の妥協の産物だったと言われる。

チョン書記長が仮に国家主席を兼ねることになれば、ベトナム政治史では歴史的な人事となる。2016年の党大会で書記長に再任されたチョン氏は、反腐敗運動でグエン・タン・ズン前首相派やクアン国家主席の出身母体である公安省に攻勢をかけて権力基盤を強固にしてきた。しかし党書記長と国家主席、首相、国会議長という「4本柱」のうち上位2つを兼ねるとなると話は違う。「4本柱のバランスと集団指導体制という2016年のコンセンサスへの重大な違反」(ロシアのベトナム研究者)とみなされ、党内の反発は必至だ。

一時は次期書記長候補とも言われたクアン国家主席の死去により、チョン書記長の権勢は強まるだろう。後任がチョン氏自身か、側近のブオン氏か、中立派のニャン氏かが、その程度を測るポイントとなる。後任の国家主席は10月上旬の党中央委員会で内定し、下旬の国会で選出されるとみられる。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)