心の機能と医療事故(上)

前回の終わりに感情に関してと書いたのですが少し予定を変えます。ある書評に載っていた本がたまたま目についたので買ったら、医療事故の分析にちょうど良かったのでこちらから紹介してみようと思います。その書籍はダニエル・カーネマン著「ファスト&スロー」ハヤカワ文庫NFです。

以前、ユングの心理学について書きましたが、ユングのシンクロニシティの発想は、実生活の体験において本当に染みます。医療での感覚、直観、感情、思考の4つの心の動きを医療事故との関連で考えているこのタイミングで、さらに何故かこの本が私の手元に来るのです。意味ある偶然の彼方に何があるのか、炭素生物であり限られた寿命の私には見えませんが、一神教の方ならあっさり神というのでしょう。

カーネマンは米国に住むユダヤ人で心理学者です。心理学の研究を経済学に統合したといった功績で2002年にノーベル経済学賞を受賞しています。何で心理学者がノーベル経済学賞をもらうんだろうという素朴な疑問も、この本を手に取った理由に含まれます。行動経済学という学問を立ち上げたという功績によりノーベル賞を授与されたとのことです。私自身はこの行動経済学に関しては全く無知でありますが、「ファスト&スロー」に書かれていることに医療事故の発生や対策において本質的な部分がありそうです。

(明日掲載の(下)に続きます。)

*本稿は私見であり、私が所属するいかなる組織の公式見解ではありません。

(櫻井 淳、日本大学医学部救急医学系救急集中治療医学分野 診療教授)