FB・グーグルとの対決姿勢を強めるベトナム

「フェイスブックは親愛なる友人」。ベトナムのグエン・スアン・フック首相は9月13日、来越したFB幹部にこう語り掛け自国のデジタル化に協力を呼び掛けた。同時にこうも釘を刺した。「国の安全保障や社会秩序、ベトナム国民の平穏な生活に悪影響を与える情報は除去して欲しい」。

有害なネット情報排除を目的とした「情報セキュリティー法」が施行される2019年1月を前に、ベトナムがFBやグーグルといったITプラットフォーマーへの攻勢を強めている。

公認メディアが政府の統制下に置かれるベトナムではネットは市民にとって不可欠な言論空間だ。特にFBユーザーは、5800万人と世界7位を数える。FBやユーチューブ上での体制批判を問題視する当局は、これまでも活動家ブロガーを拘束し、国内企業にはこれらプラットフォームでの広告を掲載しないよう圧力をかけたこともある。だが新法が成立してから圧力は直接的になっている。

フック首相は、同時期に来越したグーグルのアジア太平洋代表に「ベトナムの文化・アイデンティティーを維持できるよう一層の注意を」と要請した。これも「有害」情報を流さないよう求める牽制だろう。

より直截なのはグエン・マイン・フン情報通信大臣代行だ。FB幹部に対して「ベトナムで成功したいのであれば、研究開発とともに早期に事務所を設けるように」と言い渡した。新法は、ネットプロバイダーが国内に事務所を設置することを義務付けている。

ロイター通信によれば、FB広報は事務所設置に関してコメントしていない。明らかになっているのは、FB・グーグルがIT人材育成や企業・政府のデジタル化に協力するとフック首相に伝えたことだ。まずは当局の矛先を和らげようという狙いだろう。

FBやグーグルが、中国ほどでないにせよ新興市場として台頭するベトナムとどのように折り合いつけるかはまだ分からない。ただ注意しなければならないのは、ベトナムが海外の巨人に対抗できるプラットフォーマーを自前で育てようという壮大な発想を持っている点だ。

フン大臣代行は9月8日、フック首相を前に「グーグル・FBは税金を払わず、取引やセキュリティー面で法を守っていない」と批判し、自前のSNSやサーチエンジン育成の必要性を強調した。「このままではFBやグーグルと交渉できない。彼らは法を犯し続けても縁を切ることができないままだ」とまで発言した。

実現可能かどうかはともかく、フン大臣代行の発言が当局の本音だ。今後はFPTやSNS「Zalo」といった既存の大手を含む民族資本の育成に全力を挙げ、外資は技術やノウハウを吸収する対象とみなす傾向が強まるだろう。

フン大臣代行は、軍人出身で携帯電話事業者ベトテルを最大手に成長させた立役者だ。プラットフォーマーの裏も表も知り尽くすフン氏が、10月の国会で正式に大臣となる。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)