円借款のハノイ地下鉄計画にやまない批判

円借款で支援するハノイ都市鉄道2号線の一部建設計画に、10年前から続く批判がやまない。市民や観光客に人気のホアンキエム湖に隣接して建設する地下ターミナル駅が「景観を壊す」として、文化スポーツ観光省などが予定地の変更を求めているのだ。実際に変更される可能性は小さいものの、反対運動が巻き起これば2号線整備のさらなる遅れやコスト増につながりかねない。

2号線は市中心部から紅河沿岸のナムタンロンを結ぶ10駅11.5キロの路線で、うち都心の7駅8.5キロは地下区間となる。問題の「C9駅」は、ホアンキエム湖からわずか10メートルの距離に建設される。

ホアンキエム湖は、15世紀、黎朝の初代レ・ロイが湖に棲む亀から授かり受けた剣を用いて中国・明の支配から解放したという伝説が残る歴史遺産だ。C9駅の計画は2008年にハノイ市に承認され、市民の9割が至便な立地に賛成しているという調査結果もあるが、専門家らは由緒ある湖付近での駅建設に強く反対してきた。さらに文化スポーツ観光省は今年8月24日、ハノイ市に予定地の変更を要請したほか、国会の文化教育青少年委員会も、グエン・スアン・フック首相に再考を求めた。

この2号線を日本が支援する。円借款供与は2008年に決まり、翌年には日越間で約147億円の融資契約(L/A)が結ばれた。いわゆる「ひも付き」ODAとして、車両やシステム、建設工事、運行などで日本企業の全面的な参画が期待される。2011年にはハノイ市のコンサルタントとしてオリエンタルコンサルタンツや片平エンジニアリング・インターナショナルなどからなるJVが決まった。

さらにハノイ市は2号線を延伸して、紅河を越えてノイバイ国際空港まで結ぶ計画だ。ここに日本政府は「質の高いインフラ」輸出戦略のもと、延伸と沿線開発を官民一体で進めようとしている。延伸予定地沿線の約300ヘクタールは既に住友商事とベトナム企業が「スマートタウン」の開発認可を受けた。

C9駅の立地は「技術および安全の観点から、建設予定地は変更できない」(ハノイ市)とされ、フック首相が修正させる見込みは小さい。ただしベトナムのインフラ開発に遅れはつきものだ。同じく円借款で進めるホーチミン市都市鉄道1号線も土地収用の遅れや設計変更で工事は何年も遅れ、参加企業は振り回された。ハノイ2号線も当初は2016年稼働を目指していたが、度重なる設計変更などでいまだ着工に至っていない。その間に総事業費は当初の見積もりである19兆ドン(8億ドル)から36兆ドン(15.5億ドル)に跳ね上がった。C9駅問題が落ち着くところに落ち着くのだとしても、「遅々として進まないインフラ整備」というベトナムのリスクは頭に入れておくべきだ。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)