放射性物質入り機器紛失、「初めてではない」

放射性物質イリジウムを含む機器がマレーシアで8月に紛失した事件が、ちょっとした物議を醸している。トラックの荷台に載せていた23キロの機器が、KL近郊で移送中になくなったというのだが、具体的な状況や機器の詳細、どれほどのイリジウム(Iridium 192)が含まれているか、といったことは明らかではない。「Industrial device」と公表されただけの機器は土壌や気体を検査する会社の所有だったというが、この社名も公表されていない。

発表によれば紛失は8月10日、最初の報道が20日。機器は「Radioactive Dispersal (Dispersion?) Device (RDD)」と呼ばれるものとする報道がある。米国土安全保障省のサイト「Ready.gov」によれば、RDDは「combines a conventional explosive device — such as a bomb — with radioactive material. It is designed to scatter dangerous and sub-lethal amounts of radioactive material over a general area…RDDs appeal to terrorists because they require limited technical knowledge to build and deploy compared to a nuclear device」とある。もしこれが該当するものだとすると、「パニックする必要はない」「テロリストの手に渡った証拠はない」(マレーシア当局)とのコメントは額面通りには受け取れないことになる。

報道時のマレーシア警察によれば、類似事案で放射性物質含有の機器が紛失した事件は、昨年も起きているとのこと。域内では、IAEAや地域連携枠組みのASEANTOMが様々な手を尽くしているにもかかわらず、なんとも杜撰という他ない。

米国NPO「James Martin Center」のデータを引用する南洋工科大学RSISの論文は、放射性物質紛失事件は2013年ー17年に51か国で世界で870件あったとする。このうち東南アジア分は4件。多くはないが、東南アジアでは国境を超えたテロの可能性が高いだけに専門家からは懸念の声が上がる。域内には病院だけでも放射性物質を保管するところが多い。

東南アジアの協力体制で最も欠けるのは「human errors…and the lack of critical thinking」への注力だそうだ(前述RSIS論文)。日本にとっても耳の痛い話ではなかろうか。

(Hummingbird Advisories  佐藤 剛己)