有力紙「トゥオイチェー」サイト停止の真相

国家にマスコミが統制されているベトナムで最も果敢に社会悪や権力批判を展開してきた有力紙トゥオイチェーが7月16日、3か月間の電子版停止に追い込まれた。チャン・ダイ・クアン国家主席について「事実でない情報」を盛り込んだ記事、及び、読者からのコメント欄に「国家の団結を害する情報」を掲載した記事の2本が処分理由となった。

1本目は、2018年6月19日付「国家主席がデモ法制定に同意」だ。同記事は既に削除されているが、記事を転載したサイトによれば、クアン国家主席は同日、ホーチミン市民との対話集会で、合法かつ秩序あるデモの権利を求める市民に「デモ法制定の必要性を提起する意見に共感し、国会に報告すると約束した」と発言とされたが、この発言が事実でなかったという。

2本目は2017年5月26日付「なぜ南部メコンデルタ地方で高速道路整備が計画されないのか」。処分理由となったコメントは特定されていないようだが、「南は北に支配されている」という投稿が問題視されたと言われる。

トゥオイチェーは約100万円の罰金も科される一方で、印刷版の発行は引き続き認められた。この少し中途半端な処分内容が、処分理由やタイミングと合わせて憶測を呼んでいる。在外専門家からは「メディアへの警告」と見る。ベトナムは来年1月から「サイバーセキュリティー法」を施行して「有害な」情報を排除するためネット事業者の監視を強める。施行を前に「ペナルティーを受ける線引きをした」との見方で、国内メディア関係者からも同様の声が聞こえる。

さらにうがった見方をするフリージャーナリストもいる。ベトナム各地では6月10日に特別経済区法案やサイバーセキュリティ法案に反対するデモが起き、ビントゥアン省では暴動に発展した。これほどデモが大規模化したのは「公安が取り締まりを徹底しなかったことが原因で、背景に政権内部の亀裂がある」という指摘だ。だからこそ最高指導者のグエン・フー・チョン共産党書記長は、「デモを容認する発言をした序列2位の公安出身のクアン国家主席の発言を封じた」というのだ。真相など誰も分からないが、奥深い分析だ。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)