水問題とシンガポールの独立性

マレーシアから分離独立して53年、いつもシンガポールの頭を悩ませてきたのは「水」問題だ。分離独立当初は貯水池とマレーシアからの輸入水(浄化はシンガポール側で行われる)だけが水源で、マレーシアにほとんど完全依存状態だったが、現在は4つの水源を確保し、依存率を低下させている。マレーシア側では、マハティール新首相の最近の発言で、シンガポールとの水に関する二国間合意を見直そうという動きが出ているが、シンガポール側が応じる気配はない。現在の水合意は1962年9月に署名され、シンガポールはジョホール川からの淡水を1日2億5千万ガロン輸入できる。この輸入水でシンガポールで必要とされる水の60%を供給し、合意は更新されなければ2061年に失効する。

シンガポール政府はこの「水」論争を避けるため着実に水源確保に努めてきた。現在、輸入水以外では、マリーナ貯水池を含む貯水で必要な水の10%以上、2003年から始まったNEWaterと呼ばれる浄水で40%、工場目が完成したばかりの脱塩水で30%を供給している。今では必要な水の80%以上を自国で確保したものの、輸入依存からの完全脱却はできていない。

現在シンガポールでは家庭用と商業用で約4億3000万ガロンの水が必要とされ、2060年には倍増するとされている。これに備えてシンガポール政府は2060年までにNEWaterの供給レベルを55%に増加し、4工場目となるKeppel Marina East脱塩水・浄水工場を2020年1月までに完成させる予定。新しい工場は海水だけでなく淡水の処理も可能だ。計画通りに進めば、2060年には貯水を含め、100%の必要な水を自国で供給できることになる。

しかしあと40年以上。今後1−2年でアンワル・イブラヒム元副首相に政権を渡すとするマハティール首相だが、その「口撃」と影響力はこれからもしばらくは続きそうだ。一方、シンガポールでは、リー・シェンロン首相が2022年の引退を明言、リーダーシップの移行期に入っている。先進国としての生き残りを「国是」とするシンガポール、マレーシアとの合意を維持できるか。リーダーの手腕が問われる。

(Hummingbird Advisories 白新田 十久子)