チェコ前外相の「失言」と越との関係悪化

旧共産圏の伝統的な友好国チェコとベトナムとの外交関係にさざ波が立っている。きっかけは2017年まで外務大臣を務めた国会議員による「失言」だ。

ザオラーレク前外相は6月21日、国会外交委員会で「ベトナムは犯罪組織であり、国家安全保障の最大の脅威」と発言した。同氏によれば「学生ビザがチェコに犯罪を輸入する道具となっている」としてベトナム人に対するビザ発給の規制強化を支持し、中国人やベトナム人ギャングが覚醒剤メタンフェタミン製造にも与していると非難した。

在チェコのホー・ミン・トゥアン大使は、「発言は両国間が長年にわたり培ってきた友好や協力関係の発展に対して全く寄与しない」と反発し、外交ルートでの抗議も検討している。ベトナム国営メディアは、ベトナム側のみならずチェコの有力者からも批判されていると報じた。

興味深いのは同じ国営メディアの英語版が、このニュースを報じていないことだ。さらに先月末にチェコを訪れたベトナム国会議員団との会談で、チェコ下院のボジテック副議長が「二国間関係の強化を妨げる障害は何もない」と語ったとわざわざ報じている。

チェコ警察は6月に700キロ以上の覚醒剤の密輸に関わったとして60人を起訴したが組織を率いていたのは3人のベトナム人だったと明らかにしている。ただザオラーレク氏の発言の真意は他にもあるとの見方も出ている。

2017年夏にベルリンで亡命申請中だったチン・スアン・タイン元ペトロベトナム建設会長のベトナム当局による拉致事件に関与していたとして、ベトナム系チェコ人の男がドイツで裁判を受けているからだ。タイン元会長はベルリンからチェコの隣国であるスロバキアに連れていかれ、同国を訪問していたトー・ラム公安大臣一行が、スロバキアから借り受けた政府専用機でタイン元会長を移動させたとの疑惑も浮上している。

ここ1年でドイツ、スロバキアに加え、チェコとの関係も悪化した。2019年を目指すEU・ベトナムFTA批准への道はなお平坦ではない。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)