ミャンマーの汚職取り締まり、前進なるか

本欄「ミャンマーの腐敗防止法改正」(2018年5月30日)の通り、今月上旬、ミャンマー連邦議会が汚職防止法の修正案を可決し、大統領の署名を待つだけとなった。汚職防止委員会の権限が強化され、自身の給与ではとてもできないようなリッチな生活をしている役人を、申し立てがなくとも委員会の独断で調査に乗り出すことができるようになった。また修正法は、誤った申し立てをした個人への罰則を禁錮最高5年から最高3年に変更し、申し立ての奨励も図った。委員会は州・行政区画・郡に支部開設が可能になり、また、汚職防止の教育プログラムを小学校に始めることにもなった。

軍事政権の2013年に汚職防止法が制定され、翌年汚職防止委員会が設立されたが、政治的バックアップも法的権限も行政的権力もない中で、委員会はただ存在するためだけの存在だった。幾多の修正も、委員会の役割強化には程遠かったが、満を持して昨年11月に新たに設立されたのが、新汚職防止委員会である。委員長には、元軍人のアウン・チーで元情報相を任命。翌月には国際反汚職デーのセレモニーを初めて首都ネピドーで開催し、以後も新委員会の権限・役割を強化すべく、法律の修正に取り組んできた。

成果も出ている。旧委員会下では2014年3月から2017年11月までの3年半に4,500件の申し立てがあったが、実際に調査されたのは66件。1,126件は他省庁案件としてたらい回し地獄へと葬られた。昨年11月の新委員会設立後は毎月申し立て件数が増え、12月に353件、1月581件、2月593件、3月607件、4月640、5月1,057件を記録。計3,800件以上の申し立てのうち、すでに3,045件は対応済みである。

ここに来て一つ問題となっている案件が、チョー・ウィン前計画・財務大臣とその息子の汚職疑惑だ。疑惑を受けた大臣は5月末に辞職を発表、汚職防止委員会と特別調査局の調査を仰いだ。前大臣はマネーロンダリングの疑い、長男の高級車所持、ミャンマー農業開発銀行を計画・財務省の管轄下に置いた決定プロセスが不透明など、数々の汚職疑惑を申し立てらていた。委員会はこの調査で、政府高官や企業幹部を含む22人を聴取した。

6月9日にアウン・チー委員長は、「前大臣が汚職防止法に違反した確固たる証拠が得られなかった」と、法的措置を取らないと発表。また、申し立ての際は十分な証拠を用意して欲しいともリクエストした。しかし、直近まで現職だった大臣の調査に乗り出したというだけでもミャンマー史上前代未聞ではないか。修正汚職防止法の下、今後どれだけ汚職取り締まりを強化していけるのか。アウン・チー委員長と新汚職防止委員会の手腕の見せ所だ。

(Hummingbird Advisories 白新田 十久子)