悪化するドイツ・ベトナム関係の行方

ベトナムの対ドイツ関係が悪化している。ドイツ外務省は9月22日、在独ベトナム大使館の外交官1名に退去処分を命じ、両国の戦略的パートナーシップ関係も一時的に中断する声明を発表した。

原因は、ベトナム当局が7月にペトロベトナム建設のチン・スアン・タイン元会長をベルリンで拉致したという疑惑だ。自国首都での白昼堂々の誘拐劇を受け、ドイツ外務省は8月2日にベトナム大使館の外交官1名にまず国外退去を命じた。

9月22日の声明によれば、ドイツはベトナムの謝罪と再発防止の約束、さらにタイン氏に対して法の支配に基づき、国際社会に開かれた裁判を行う要求したが、受け入れられなかったために追加的な措置となった。

9月に訪越した欧州議会国際貿易委員会のベルント・ランゲ委員長も、拉致疑惑について記者団に「この問題が自由貿易交渉の足を引っ張らないことを希望する」と述べ、ベトナムの出方次第で来年発効予定の両者間のFTAが宙に浮く可能性を示唆した。

ただドイツの要求は、タイン氏の身柄引き渡しから謝罪と公正な裁判にトーンダウンしている。乱脈経営に関与したタイン氏は人権活動家などとは異なる。ドイツにとって深追いするメリットが大きいとは言えない。

ベトナム側にとってもタイン氏は、同氏と近かったディン・ラ・タン・ペトロベトナム元会長やグエン・タン・ズン前首相を追い詰める手段のはずだ。ドイツを刺激し続ける価値があるとは思えない。欧州は人権問題に敏感なため予断は許さないが、両国は落としどころを探っているはずだ。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)