マレーシア新政権を迎える興奮と、複雑な現実

マレーシアの前ナジブ政権下でブロックされていたウエブサイトが先週、閲覧可能となった。Free Media(報道の自由)の「復活」は、マハティール元首相率いる野党連合Pakatan Harapan=PH (Alliance of Hope)が政権交代前に約束した通り。他に閲覧可能となったのはAsia Sentinel、Medium、Sarawak Report。Malaysian ChronicleもDNS設定の変更で閲覧可能となっている。これらのサイトがブロックされたのは、Sarawak Reportによる政府系ファンド1MDBに関するナジブ氏の汚職告発記事やナジブ氏の選挙敗退予想記事を削除しなかったためで、政権末期に議会を通ったフェイクニュース規制法に反したためだ。5月17日に、Lawyers for Liberty(自由のための弁護士団)の要求に応える形で、マハティール新政権がブロックを解除した。

新政権(写真は投票翌日の新聞)は報道の自由の他にも、独立した司法、独立した反汚職委員会、首相府の権力削減、政敵排除のために前政権下で使われた数々の治安法の廃止、そして消費税の廃止を約束している。すでに報道の自由と消費税の廃止(6月1日開始)を実現した。選挙後のクアラルンプールでタクシー運転手数人に選挙後の聞くと、みんな初めての政権交代を喜び、政権運営経験の長いマハティール氏の返り咲きに安定感を感じていた。

街場の興奮とは別に、現実は厳しい。マレーシアはマハティール氏の時代から大きく変わり、選挙で選ばれた新政権は政治的・民族的に色合いの違う4つの党の複合体である(次の首相を確約されているアンワー・イブラヒム率いる人民正義党=PRK、中華系マレーシア人の民主行動党=DAP、マハティール首相が反ナジブの下に設立したブミプトラ団結党=PPBM、穏健イスラム派で構成される国民信任党=Amanah)。

選挙結果にも政権交代に対する反応の違いが浮き彫りとなった。中華系とインド系が多く、マレーシアの産業の中心地である西海岸側のペナン、クアラルンプールとその周辺のセランゴール、ジョホールでは新政権が80%近くの議席を獲得。一方、マレー人が大多数を占める北東海岸の州では議席を一席も取れなかった。ボルネオでは、ナジブ政権下で作られたゲリマンダー議席と議席数の不平等配分の効果で、PHの獲得票数が最大にもかかわらず、ナジブの統一マレー国民組織がPHよりも多くの議席を獲得した。

マハティール首相がこれらの違いを乗り越え、これからのマレーシアのための青写真をどう描くのか。アンワー次期首相がその青写真を受け継ぐのか、新たな青写真を描くのか。アセアン域内の力関係にも影響するだけに、これからの展開に目が離せない。

(Hummingbird Advisories 白新田 十久子)