政局が影を潜めた「7中総」

国の重要事項を審議する半年に一度の第7回ベトナム共産党中央委員会総会(7中総)が5月12日、6日間の日程を終えた。取りざたされたチャン・ダイ・クアン国家主席の最高指導部・政治局員からの退任はなく、ベトナムメディアはむしろ公務員制度や社会保険改革の議論に焦点を当てた。

健康不安がささやかれ、側近の逮捕などが続くクアン氏が事実上更迭されるとの見方もあったが、ある研究者は「議題が変更された」と説明した。日経新聞は会期後半の11日にクアン氏の「電撃失脚」が「現実味を帯びつつある」と報じたが、クアン氏留任は会期前半までには決していたとみられる。

同氏は今月下旬に国賓として訪日するとされる。仮に7中総で政治局員を退いていた場合、5月後半に開幕する国会で国家主席からも退任することになるが、有名無実化した元首を最大支援国の日本に国賓として送るだろうか。少なくとも秋の8中総までは現職に留まることが早々に決まっていた可能性もある。

指導部の政局に注目が集まったが、7中総はベトナムの将来を占う上で極めて重要な議論を行った。グエン・フー・チョン書記長は7日の開幕演説で「党と政治システムにとって特別な『戦略的』公職者からなる組織を建設する」と発表した。「戦略的公職者」は中央・地方の指導部にある600人からなり、ここから200人規模の将来の中央委員たちが選抜されていくという。5年ごとの党大会の中間年に入り、次期中央委員の候補選定段階に入ったということだろう。

現在のベトナムが抱える大きな問題は、経済発展に伴い電力や交通インフラの必要性が高まっているにも関わらず、公的債務が膨らみ予算を確保できないことだ。問題の根源は党と国家機構の肥大化にあり、少子高齢化に伴う社会保障費の負担の増大も確実視される。7中総では公務員の削減と待遇改善を議論した。党書記長・国家主席・首相・国会議長のトップ4でも月給は1500万ドン(75,000円)とされるが、現実的な賃金体系を再構築すれば、汚職の減少も期待できる。

さらに公的保険の加入率引き上げや、現在は男性60歳、女性55歳の定年退職年齢引き上げも議題に上った。急速な少子化の影響でベトナムも2026年には高齢化社会が始まり、高齢化スピードは世界最速の一つになる。詳細は発表されていないが、国の将来を見据えた国民受けしない改革にどこまで切り込めるかが問われている。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)