高技能人財不足と少子高齢化が脅かすシンガポールの将来

グローバル・エグゼクティブサーチ会社コーン・フェリーが先週、高技能人財を将来予測したレポート「Global Talent Crunch」を出した。アジア太平洋、アメリカ、ヨーロッパの主要20市場のタレント不足を2020年、2025年、2030年に区切り、金融・ビジネスサービス、TMT(テクノロジー、メディア、コミュニケーション)、製造業の3分野で調査したもの。結果、2030年までにインド以外の主要経済国(地域)で深刻な高技能人財不足が予測され、今のドイツ人口より多い8520万の高技能ポジションに成り手が付かず、8.5兆米ドル近くの収益(ドイツと日本のGDPを足した位)が逸失されると分析した。

3分野の中では金融・ビジネスサービスが最も深刻で、2030年までに1030万人の高技能人財が不足、毎年1兆3,000億米ドルの損失を引き起こすとした。先進国ではすでに多額の損失が発生中で、2年後の2020年までにその額はオーストラリア、フランス、ドイツ、日本、アメリカで年間1兆8760億米ドルに上るという。

シンガポールも例外ではない。2030年までに100万人分の高技能人財不足(毎年1068億米ドル相当)が生じると報告書は警告。金融・ビジネスサービスでは、2030年まで毎年292億米ドルの機会損失と予測されている。

政府はすでに、シンガポール人労働者の技能アップの施策を打ち出し、特に大企業にはより多くのシンガポール人の雇用・起用を促し、必要なトレーニングを義務付けている。また、Capability Transfer Programmeというプログラムに着手し、シンガポール人の技能アップのために海外から高技能人財を呼び寄せたい企業をサポートしている。

シンガポールの少子高齢化は、しかし、こうした施策を水泡に帰す勢いで進んでいる。2017年6月現在の人口が561万人。うちシンガポール国民または永住権者は397万人(70.77%)で、国民・永住権者の2017年の特殊出生率は1.16と、過去7年で最低だが、シンガポール人の平均寿命は男性80.6歳、女性85.1歳(いずれも2016年)と延びている。女性の結婚年齢は30年前に比べて2倍、逆に20歳台後半での出産は半分に減った。

現在シンガポールは、外国人へのビザ及び永住権・市民権発給基準を厳しくしているが、シンガポール人の管理職・高技能労働職への移行がうまくいったとしても、将来的にそれを担う人口が増えなければ何もならない。日本と同じで、人口自然増が期待できない中、国としての生き残りをかけて、さらなる移民政策の見直しも視野に入ってくるかもしれない。

(Hummingbird Advisories 白新田 十久子)