追い詰められるホーチミン市のドン

ホーチミン市の人民委員長や共産党党書記として2016年まで10年以上にわたり君臨したレー・タイン・ハイ氏に対する包囲網が狭まっている。ホーチミン市2区トゥーティエムの大型開発での不正疑惑が急浮上しているのだ。

ホーチミン市中心部の1区からサイゴン川をはさんで対岸にあるトゥーティエム半島は、1996年に新都市区として開発が決まった。開発面積657ヘクタールで東南アジア最大の金融・商業地区を目指す壮大な計画に従い、10年かけて1万5000世帯が立ち退いた。

ベトナムで往々にしてある通り、トゥーティエムでも不当な土地収用があったようだ。立ち退きを強いられた一部の住民らが「本来の開発対象は500ヘクタールで自分たちは移転の必要がなかった」と言い立て、当初のマスタープランの提示を求めたところ、市幹部は5月2日に「1996年当時のマスタープランが見つからなかった」と発言したのだ。どこかの国の役所を思わす「公文書の紛失」で騒ぎは一気に大きくなった。

安い立退料で本来の計画よりも広大な土地を手に入れた不動産デベロッパーが転売により数倍の利益を得たと取り沙汰されている。土地は全て国有地であるベトナムでは当局の関与なしではできない芸当で、ホーチミン市のドンことハイ氏に疑いの目が向けられている。

2016年のハイ氏引退後に激しくなったグエン・フー・チョン党書記長による反腐敗運動により、同氏周辺への追及も始まっている。今年3月には弟でサイゴン農業(SAGRI)のレー・タン・フン社長が会計上の不正で、4月には息子で市12区のレー・チュオン・ハイ・ヒエウ人民委員長が隠し子がいたとして党から規律処分を受けた。ハイ氏の外堀は埋まりつつある。

ハイ氏は、チョン書記長の政敵であるグエン・タン・ズン前首相に近いとされる。またチョン書記長は、ダナン市でも長年にわたり権勢を振るった故グエン・バー・タイン氏の影響力排除に動いている。ハイ氏本人に追及の手が伸びるかはまだ断定できないが、同氏在任中の遺産は確実にチョン書記長のターゲットになっている。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)