中印、「同床異夢」から抜け出せるか

先週、朝鮮半島を巡る南北首脳会談とアセアン首脳会議という二つの重大イベントが行われる中、アジア、そして世界にとって将来大きな意味を持つであろう会議が開かれていた。中国・武漢で4月27日、28日の両日行われた中国とインドの非公式首脳会議だ。約4000キロに及ぶ国境線を共有する2国は、1962年の中印国境紛争以来、政治的にギクシャクした関係が続き、中国が「一帯一路」計画を推し進める中、昨年来、国境問題は一層加熱している。

きっかけは2017年6月、中国がインド保護国のブータンとの国境付近(ドクラム高原)で道路建設を始めたことだ。その後中印両軍が72日間睨みあうことになった。定期協議の場を設定することで、一時事態は収束したと思えたが、その後12月には、中国がインド北東部のナーチャル・プラデーシュ州(中印国境紛争の主戦場で、現在はインドが実効支配)で道路建設をしていることも発覚。インド軍とインド・チベット国境警察が作業員を中国側に追い返し、関係は逆戻り。今年1月にはインド陸軍司令官が事態収束を発表したにもかかわらず、その直後、中国がドクラム高原でヘリパッド7つを含む建造物を建設していたことが発覚。国境問題は緊張する一方であった。

そんな中での非公式サミット、共同声明が出されなかった。代わりに、それぞれが出した声明を読むと、両国が基本合意したのは主に、1)国境エリアでの平和平穏を維持するため、軍に対して戦略的ガイダンスを提供し、今ある国境紛争解決のメカニズムを強化する、2)戦略的なコミュニケーションを重ねて緊張を予防し、すべての違いを平和的議論で解決する;3)アフガニスタンで共同経済支援プロジェクトを行う、である。しかし、内容は似ていてもフォーカスが違うし、言葉のニュアンスも違い、逆に「同床異夢」が浮き彫りになってしまったかのように思える。例えば貿易面では、インドが貿易不均衡に重きを置く一方、中国は投資の重要性にフォーカスを置いた。また、中印2か国間関係の位置付けについては、モディ首相が「両国関係をきちんと管理することが『アジアの世紀』のための条件だ」とした一方、習主席は「中印間の平和で安定したバランスのとれた関係は世界の安定のために重要なポジティブ要素だ」とした。

信頼醸成にはまだまだ時間がかかりそうである。今までの不信(mistrust)は特にインド側で深く、何よりインドは近隣のスリランカ、モルディブやネパールで中国が経済的かつ外交的影響力を強めていることを警戒していて、まだまだ和かにハグする仲にはなれない。まずは、初めての共同経済支援がうまく進むか、再度国境線で問題が起きた時に両国がどう対処するかが、関係改善を占う試金石となるだろう。

(Hummingbird Advisories 白新田 十久子)