米越関係の裏にカジノ商人の陰

米トランプ政権との接触を試みるベトナム政府の背後に、トランプ氏に近いカジノビジネス関係者らが暗躍しているとの疑惑が持ち上がっている。トランプ氏当選後のフック首相との電話会談を仲立ちした米国の弁護士が、別のクライアントのカジノ事業のためにベトナム政府にベトナム人のカジノ入場解禁を働きかけたと可能性があるという。

疑惑を指摘したメディアは、米ラジオ局WNYCとNPOプロパブリカが運営し、トランプ政権とトランプ氏のビジネスとの関係について報道を続ける「Trump, Inc.」。ベトナムのグエン・スアン・フック首相は2016年12月14日にトランプ氏と電話で会談し、当選の祝意を伝えている。この電話のおぜん立てをしたのが15年にわたりトランプ氏の代理人を務めてきたマーク・カソヴィッツ弁護士だ。

問題はカソヴィッツ弁護士の顧客に、ホーチミン市近郊の大型カジノリゾート「グランド・ホーチャム・ストリップ」に4億5000万ドルを投資するファンドも含まれる点だ。関係者によれば、ファンドを経営するフィリップ・ファルコーネ氏がカソヴィッツ弁護士に電話会談のアレンジを依頼したという。大統領就任予定者の電話会談が米国務省の頭越しに設定されたことになるが、ファルコーネ氏は依頼について否定している。

電話会談の翌月、ファルコーネ氏はベトナムに飛びフック首相を表敬。「米企業による長期的・安定的なベトナム事業の実施のために投資環境の継続的な改善」を促している。

また2017年5月にフック首相が訪米した際には、ファルコーネ氏やホーチャムに参画するコンサルティング会社アジア・グループが投資家フォーラムを首相のために主催した。

もっともTrump, Inc.は「トランプ大統領とフック首相の間でカジノについて協議がされた証拠はない」と認めている。またベトナム政府は2017年1月にベトナム人にもカジノ入場を条件付きで開放する政令を公布したが、ホーチャムは試験運用の対象から漏れた。現時点でファルコーネ氏が訴えた「投資環境の継続的な改善」は達成できていない。

カソヴィッツ弁護士もトランス大統領との関係を他のクライアントの利益に利用したとの疑惑を否定している。ただホーチャムの運営企業はトランプ氏の当選1週間後の2016年11月、2カ月前に就任した女性取締役がトランプ氏のリゾート会社の幹部であったことをわざわざ発表した。アジアビジネスにおける「政治との近さ」の重要性を、米企業も熟知していることは理解しておいた方がいいだろう。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)