ルールを破っても悪びれない中国

米国と中国の貿易戦争の火の粉がマレーシアにも降りかかっている。ニューヨークタイムズの記事によると、中国の物流会社が「トランスシップ」という手法を利用して、中国産の製品をマレーシアの港に送り、そこでマレーシアの製造会社の協力でマレーシアの生産国証明書を得て(つまり生産国偽装)、米国に送る、というもの。コストはかかる。40フィートのコンテナにつき約2,000米ドル追加になるが、米国から掛けられる関税に比べれば、安く済むらしい。トランスシップ自体は違法ではなく、加えてマレーシアには関税回避に対する特定の法律がない。しかし、生産国偽装は違法であり、バリューチェーン公正性確保の観点からも迂回貿易は批判されるのが潮流だ。

こういった関税回避策を採るのは中国の会社だけではない。米国の昨今の関税政策には賛否あろうが、問題視されているのは、中国の会社が広範かつ緻密な手段で国際貿易のルールや慣行を無視して、その上に悪びれない態度である。記事で紹介される中国の物流仲介会社は、他にも様々な課税回避の手段を持ち、その一つが、大容量の注文を小さな積荷に分け、国内の複数港から分散して出すことで、米側の貿易協会が実際の大容量に気づかないようにするというものだ。ある物流仲介会社のオーナーは、「どこの国が生産国か調べ、ビジネスが違法であるかどうか判断するのは米政府の仕事だ」と開き直る。会社によっては、ウェブサイトや広告で「トランスシップが高関税と輸入制限を避ける唯一の方法」とうたったり、「中国製品を国際市場に送り出すために国際協調貿易とダンピング防止の壁をぶち破る」と言った愛国心に訴えるメッセージを使っている。

米政府は、関税課税回避の実態に関する証拠を集め始める、いや集め始めているであろう。そして、何らかの行動をマレーシアやその他の米中関税バトルの火の粉をかぶっている国に求めることになるだろう。

が、それもニューヨークタイムズの記事はやや悲観的。1990年代の中国産衣類の香港での生産国偽装のケースを取り上げ、米政府が十分な証拠を集める頃には対象の中国企業はすでに消え去り、「結局モグラ叩きで終わるのでは…」とい専門家のコメントで締めている。米が始めた関税バトル、逃げられる前に捕まえられるか。まさに、トムとジェリーだ。

(Hummingbird Advisories 白新田 十久子)