ベトナム:春の政局を前に吹く粛清の嵐

半年に一度のベトナム共産党中央委員会総会が5月初旬にも開かれる。中央委総会は党と国の重要人事・政策を事実上決定する。総会後に開かれる国会本会議は欧米メディアに「ラバースタンプ(ゴム印)」と評されており、総会の決定を踏襲するに過ぎない。

昨春の総会ではディン・ラ・タン政治局員が、昨秋はダナン市のグエン・スアン・アイン党書記が解任された。腐敗追及で権威を高めるグエン・フー・チョン書記長は、次の総会で大規模な人事を断行するとの予測もあり、総会を前にその見方を裏付ける事態が進展している。

まず党ナンバー2、チャン・ダイ・クアン国家主席の座がますます不安定になっている。党は先月、指導部に定期的な健康診断と結果の報告を義務付けた。昨年夏に重病説が流れたクアン主席への牽制だろう。さらに今年に入ってクアン主席の出身母体である公安で違法オンライン賭博への関与により現役・元幹部が次々と逮捕されており、主席の側近も連座している。

決定的な打撃は、元諜報員でダナンの実業家「ブー・ニョム」ことファン・バン・アイン・ブー氏の逮捕だ。クアン主席とブー氏のそれぞれの妻は親戚関係にあるとされ、ブー氏の土地取得や国家機密漏洩に絡んで諜報機関の元トップやダナンの元人民委員長らが逮捕された。

次に、書記長の長年の政敵で一昨年の党大会で引退に追い込まれたグエン・タン・ズン前首相をめぐる動きだ。今年に入り有罪判決が下されたタン前政治局員を始め、元側近の処分が相次ぐ。最近では国営通信事業者によるオーディオ・ビジュアル・グローバル(AVG)買収価格が「不正に高値に設定された」として政府により買収契約を無効にされた。モビフォンは、ズン氏の娘、グエン・タイン・フオン氏が経営するベトキャピタル証券と関係が深い。モビフォンの元経営陣や所管する情報通信省幹部の処分が予測されている。さらに書記長の最終ターゲットはズン前首相との指摘は党大会後からたびたびされている。

最後にベトナム版「紅二代」とも言うべきスピード出世を遂げている元指導部の子どもたちに対する取り締まり強化だ。ダナンのアイン前書記の父親は元党中央検査委員長だった。そのほかにも各省で二世たちの縁故人事が次々と処分対象になっている。先週はホーチミン市12区のレ・チュオン・ハイ・ヒエウ人民委員長が交際女性との「隠し子」が発覚し、譴責処分を党に下された。ヒエウ委員長はホーチミン市党書記として権勢を振るったレ・タイン・ハイ氏の息子であり、チュオン・ミー・ホア元国家副主席女史の甥だ。ズン前首相の長男タイン・ギ氏はキエンザン省党書記、次男のミン・チエット氏もビンディン省で党の要職に就いており、安穏としていられない。

中央委総会ではこれまでに明らかになった不正に関与した党員の処分が決まるであろう。さらに総会までに、党の不正取り締まり機関である中央検査委がどのような動きを示すかも、政局を占う上で目が離せない。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)