ベトナム:言論の自由とフェイスブックの「忖度」

個人情報漏洩で世界中の非難にさらされているフェイスブックが、ベトナムでは別の側面から批判を浴びている。理由はフェイクニュースを流したからではなく、投稿された政府批判を削除したからだ。

反政府団体やジャーナリスト、活動家ら約50組は4月9日、フェイスブックに公開書簡を送り、「昨年以降、アカウント凍結や投稿の削除が急増している」と批判した。2017年4月、フェイスブック幹部がチュオン・ミン・トゥアン情報通信大臣と会談し、「コンテンツの監視や削除で協力することに同意した」。この会談後に活動家らのフェイスブック上での投稿が著しく制約されることになったという。

公開書簡を受けてフェイスブックは一部メディアに声明を発表し、情報通信大臣との会談の影響は否定した。ただし「われわれのコミュニティ・スタンダードに違反していなくても、特定の国の法律に違反する場合はコンテンツを削除もしくはアクセスを制限することがある」と回答した。ベトナム政府の要請による事後検閲を事実上認めたと受け止められている。

ベトナムにおけるフェイスブック利用者は5500万人。人口9400万人の6割近くを占め、国別でトップ10に入るフェイスブック大国だ。このフェイスブック人気の裏には、単に自撮りやSNSが好きな国民性だけでなく、国の統制下にあるメディアへの不信感がある。公開書簡はフェイスブックを「公明性、人と人とのつながりのかがり火」と評した。ベトナムでは表に出ない政局や外交政策、政治家の動静や不祥事がフェイスブックを通じてたびたび流出する。玉石混交はあるが、情報収集手段としての重要性は先進国を遥かに上回る。

それだけに政府も神経質になっていた。昨年3月にはフェイスブックやユーチューブへの広告を取りやめるよう企業各社に指導をし、不法なコンテンツを削除するよう圧力をかけた。広告市場としての重要性とネット上の自由な空間という理念のはざ間で、フェイスブックのプラットフォーマーとしての立ち位置が揺さぶられている。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)