火に油を注いだベトナムLCCの広報対応

わずか6年で国内線のシェア4割を握るまでに急拡大したベトナムのLCCベトジェット航空が批判にさらされている。国中が熱狂した23歳以下(U-23)アジアサッカー大会での準優勝を成し遂げた代表チームの帰国チャーター機での「ビキニショー」が発端だ。

ベトジェットは1月28日、代表チームをねぎらうために機内でビキニ姿のモデルらによるショーを実施。うち一人のモデルが選手らに寄り添って写真を撮影し、SNSに投稿したことところ、国の英雄たちを利用した下品なマーケティングとしてたちまち大炎上した。

ベトナム初の女性億万長者として知られるベトジェット航空のグエン・ティ・フオン・タオ社長はその日のうちに声明を出して謝罪。しかしショーは「担当部署が自発的に行った」としたうえ、写真撮影も「モデル自らが選手らを求めた」とする釈明に国民は納得せず、批判は激化。ネット上では「VietjetではなくVietsex」と揶揄され、ボイコットを求めるコメントも飛び交った。

さらに写真を投稿したモデル自身がビキニ着用や写真撮影は「ベトジェット側の指示」と反論し、同社の信頼をさらに損ねる形となった。当局も30日、世論に押される形で飛行中のショーは「安全を脅かすリスクがあった」としてベトジェットを約20万円の罰金処分に科した。

ベトジェットは就航以来、きわどい恰好をした女性モデルを使ったマーケティングを活用してきた。「Me Too」に代表されるセクハラに敏感な一部の欧米メディアからは「ビキニ・エア」とも称されてきたが、伝統的なアオザイ姿が女性客室乗務員の制服となっている国営ベトナム航空と差別化し、斬新なブランドイメージを打ち出すことに成功した。昨年2月のIPOは1億6400万ドル規模に上り、タオ社長はベトナムを代表する女性経営者として国際的な注目を浴びている。

ただ今回は国のヒーローで、うら若い23歳以下の青年たちを商業利用したことが、伝統的な価値観だけでなく愛国心を刺激した。さらに即日に謝罪した対応自体は迅速だったが、創業社長の大富豪が現場やモデルに責任を押し付けるような印象を与えた。

よく言われるようにベトナム人は日本人と異なる謝罪文化があり、簡単には謝らない。ただ今回に限って言えば、ビキニショーへの世間の反応を読み誤っただけでなく、炎上後の広報危機管理もおそまつだった。

一部にボイコットを求める声もあるものの、高速鉄道や高速道路が完備されていないベトナムで、今やLCCのベトジェットは避けては通れない選択肢だ。事件があった翌週も同社の株価はむしろ上がっており、投資家からは問題視されていない。

ただ競合も多い日用品や食料品、流通市場などで外資企業が誇り高いベトナム人の愛国心を害すれば大やけどを負いかねない。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)