勢いを増すベトナムの反汚職運動

2016年初頭の共産党大会後に本格化したベトナムの「反汚職」が、昨年末から再び目に見えるところで勢いを増し、国際的な関心が高まっている。

1つ目は1月8日に始まった、ペトロベトナム建設(PVC)によるタイビン第2火力発電所のEPC契約の不正受注と公金横領などに関する裁判。被告22人には最高指導部、共産党政治局の一員だったディン・ラ・タン氏、昨年7月に逃亡先のドイツから拉致により連れ戻されたチン・スアン・タインPVC元会長も含まれる。同裁判は1月21日まで続く。

2つ目は建設銀行の不正融資事件の裁判だ。同裁判も8日に始まり、被告46人が裁かれている。同行のファム・コン・ザイン元会長が2013~2014年にかけて虚偽の書類を作成してサコムバンク、TPバンク、BIDVの3行から自身などが所有する29社に計6兆1000億ドン(300億円)を融資させ、一部を横領したとされる。融資の担保に3行への建設銀行の預金が使われていたため、債務の不履行により建設銀行に損害を与えた罪だ。被告にはサコムバンクの大物元副会長、チャム・ベー氏も含まれている。2月7日に結審する。

そして3つ目が年明けに逃亡先のシンガポールから送還されたダナンの実業家「ブー・ニョム」ことファン・バン・アイン・ブー氏の拘束だ。実はブー氏は元諜報機関の一員で、PVCのタイン元会長の拉致に関する機密情報を漏えいしようとしたとされる。さらにブー氏による不正な不動産取得も指摘されている。

3つの事件は最高指導者グエン・フー・チョン共産党書記長が推進する反汚職運動の一環だが、中央の政争と密接に関連する。

PVCと建設銀行の裁判は、グエン・タン・ズン前首相の派閥に対する追い落としが、少なくとも目的の一部にある。タン氏は裁判で、PVCに対するEPC契約の発注が「首相の決定に沿った判断だった」と極めて重要な証言を行った。今後、ズン氏本人への追及の突破口となりえる。また建設銀行の裁判では、長く銀行界のドンとして君臨し、前首相とも近かったとされるBIDVのチャン・バック・ハー元会長が証人として喚問された。ハー氏はシンガポールで肝臓がんの治療中として欠席したが、過去の不良債権問題の責任論などを考える上で興味深い。

さらにブー氏の拘束は、党ナンバー2で公安大臣を務めていたチャン・ダイ・クアン国家主席に対する政治的な攻撃と受け止められている。警察総局のファン・バン・ビン元長官が逮捕されたとのうわさがネット上で出回り、公安省が12日に否定しているが、ブー氏の事件をめぐり公安内部で何かが動いている。一連の大きな疑獄は、底流でつながっている。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)