2018年の「ベトナム・リスク」

2017年のベトナム経済は第3四半期になって急回復し、政府目標である6.7%成長が見えてきた。2018年目標はほぼ横ばいの6.5~6.7%成長に設定された。世界銀行なども6%台半ばとの予測で一致する。

けん引役は輸出だ。今年は電話や電子関連が前年比3割以上のペースで伸びている。サムスンやLGによるスマホや家電などの貢献が大きい。内需も実質ベースで10%弱と昨年を上回る成長を見せる。

ただリスクもある。第一は米国の保護主義だ。米国はサムスンやLGがベトナムで生産する洗濯機にセーフガードを検討している。また一部の鉄鋼製品も中国から迂回輸出されているとして制裁関税を仮決定した。こうした動きは直接的に輸出を抑えるだけでなく、輸出拠点としてのベトナムの魅力を減退させる。

EUとのFTAも発効が遅れている。ドイツは、チン・タイン・スアン元ペトロベトナム建設会長が7月にベトナム当局によりベルリンで拉致されたと抗議している。またEU内ではベトナムの人権状況への批判もくすぶる。政治問題がFTA発効の障害になれば、対EUアパレル輸出などの成長は鈍る。

公共支出にも不安が残る。今年は公的債務残高の対GDP比を65%以下に抑えるという至上命題のもと、なりふり構わぬ歳出削減が行われ、円借款で進めるホーチミン市メトロ1号線の工事費未払いが表面化した。削減対象は公共工事全般に及んだ。大都市での道路渋滞は急速に悪化しており、交通インフラ整備が遅れれば、周辺の住宅開発に悪影響を与える懸念がある。

不良債権問題の再燃も考えられる。政府は6.7%目標を達成するため7月に3年半ぶりの利下げに踏み切り、貸出残高伸び率の通年目標も18%から8月に21%へ上方修正された。伸び率は18~19%で着地する見通しだが、ノルマ達成へ無理な貸し出しをした銀行もあるはずだ。

最後に企業にとっての課題として「スピードへの対応」を挙げたい。ハノイやホーチミン市では過去2年でグラブやウーバーが瞬く間に普及し、従来型タクシーを駆逐した。ノジマが出資する家電量販店チャンアインも店舗網の拡大に遅れ、テーゾイ・ジードンに買収される。波に乗り遅れれば即敗北につながるという危機感が求められている。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)