「親日家」元政治局員の逮捕

将来の最高指導者候補との呼び声も一時はあったディン・ラ・タン氏が8日、国営石油会社ペトロベトナム会長在任時の不祥事よる巨額損失の責任を問われて逮捕された。日本経済新聞は、「親日家として有名」なタン氏の逮捕により、「今後の日本のインフラ受注などに影響が出る可能性もある」と指摘しているが、違和感を覚える。

タン氏は2006年にペトロベトナム会長に就任後、2011~2016年にグエン・タン・ズン政権下で交通運輸相を務めた。交通運輸省は、交通インフラ支援が多くを占める円借款の供与先としては最大の官庁となるため、当然日本の官民とのパイプはできる。実際にタン氏はベトナム日本友好協会の会長も一時務めていた。

だからといってタン氏が「知日派」を超えた「親日派」で、彼の影響力で日本がインフラ受注をできたのかと言えば疑問が残る。たとえば建設中のホーチミン市都市鉄道1号線への円借款は既に2007年に決まった。1号線工事代金の支払いは昨年後半から遅れが顕在化し、ホーチミン市共産党書記を当時務めていたタン氏への「中央政府の嫌がらせでは」との憶測もあった。しかしタン氏が今年5月に失脚後も問題が解決されていないところをみると、未払いは公的債務残高を抑制する目的にほかならない。

ベトナムは主要な交通インフラ整備を円借款などODAに依存し、PPPに外資の参画は進んでいない。またODAでも日本企業は、「ひも付き」以外で大型交通インフラを受注できていない。問題の本質はタン氏とは別のところにある。

ただタン氏の逮捕を契機に、交通インフラ整備の「透明化」は進むだろう。国内投資家によりBOT方式で整備する道路の料金所が先週、ドライバーの激しい抗議運動で閉鎖に追い込まれた。各地でBOT道路整備の不正が問題となっており、タン氏の運輸相時代のBOT事業認可に追及のメスが入る可能性がある。そうなればPPPの在り方が見直され、透明化の名の下でより硬直的な事業者選定がされるようになる恐れがある。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)