フィリピンの多角化政策:アメリカ離れと中露シフト

APEC首脳会議での演説で、フィリピンのドゥテルテ大統領が謝意を述べたリーダーがいる。ロシアのプチン大統領だ。マラウィのISグループの掃討作戦で必要な武器を、ロシアが無償で提供したのだ。フィリピンは最初、同盟国であるアメリカを頼ったが、ドゥテルテ大統領の過激な麻薬取締における人権侵害を問題視した米国議会が武器の提供を許さなかった。

ロシアが提供したのはカラシニコフ5,000丁、スチール製ヘルメット5,000個、100万個の弾薬、軍用トラック20台だ。それに加え、二つの軍事協定を調印し、フィリピンが自然災害時に必要な特別装備を将来的に購入することも約束した。ロシア軍とフィリピン軍の交流も活発化しており、今年初めにはロシアの軍艦2隻がマニラを4日間訪問、今後は共同海上演習も検討している。

この件に関して、マティス国防長官は、「テロリストと戦うための装備を他国がフィリピンに提供したとて何ら心配することはない。」とコメントした。果たして、そうだろうか。

ドゥテルテ大統領の下、フィリピンが経済面でも軍事面でも中露シフトの多角化政策を取っているのは明らかだ。フィリピンへの経済支援・投資を続ける中国に配慮してか、ASEAN首脳会談ではあえて南シナ海問題が中心議題とならないように各国に釘を刺した。掃討作戦の際には、ロシアに加え中国も、小銃などの小火器をフィリピンに提供している。ロシア側はヘリコピターヤ潜水艦、その他洗練された武器を提供する準備があるとし、プチン大統領自身も今回のドゥテルテ大統領とのミーティングで「軍事面においても我々の関係を発展させる準備がある。」と明言した。

米中露、大国の思惑が複雑に絡む中、日本はどうフィリピンと向き合うか。日本政府は外交だけでなく、投資・ビシネス面で中露の国家資本主義に対抗できる政策支援を、財界に示す必要がある。

(Hummingbird Advisories 白新田 十久子)