WIPO事務局長、「問題」豪人からシンガポール人に

コロナウィルス禍に世界が翻弄される中、ある国連機関の事務局長ポジションをめぐる米中バトルが決着した。今月初旬、世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization、WIPO)は、次期事務局長にシンガポール知的財産局局長のDaren Tang Heng Shim(ダレン・タン)氏を指名した。アメリカ、ヨーロッパ、日本や台湾などからの支持を受けたタン氏が、中国が強く推した現WIPOブランド・デザイン部門担当副事務局長の王彬穎(Wang Binying)を55票対28票で下した。正式決定は193の国連加盟国の投票を待つことになるが、これは形式的なもので、タン氏就任はすでに決まったも同然。シンガポールにとっては初の国連機関トップポジションとなる(写真はFlickcrから、2011年の総会風景)。

国際機関のトップは大国の思惑と駆け引きで決められることが多く、中立なはずの国連機関のトップが、何かと支持をくれる国寄りになることも少なくない。WHO事務局長が中国寄りすぎると言う批判がいい例だ。

WIPO事務局長ポジションに関しては、王氏が指名されれば、中国が認定前の出願特許に不正アクセスしたり、グローバルIPルールを自国都合で改変するのではと、専門家の間で懸念されていた。アメリカにとっても、中国との5G通信規格に関するバトルが激しくなる中、WIPO事務局長ポストを中国に渡すわけにはいかなかったのだろう。

任期は今年10月から6年。細かい事情はわからないが、オーストラリア人の現事務局長のFrancis Gurry(フランシス・カリー)氏は、知人が経営する豪企業に大規模なIT契約を与えるのを目的に北朝鮮とイランの票を得るため、アメリカ製高性能コンピューターを備えたサテライト・オフィスをこの2か国に設置したとしてとして大問題になっている

タン氏が、シンガポールの厳格・柔軟かつ説明責任を果たせるマネジメントスタイルでWIPOを率いてくれることに期待している人も多いことだろう。

(Hummingbird Advisories 白新田 十久子)