イスラム過激派掃討終了も市民に犠牲者、復興にも課題

フィリピン南部ミンダナオ島のイスラム地域にあるマラウィで5月下旬に発生したイスラム過激派と政府軍の武力衝突は、5か月に及ぶ政府軍の掃討作戦を経て10月23日に終結宣言が出た。中東のIS(イスラム国)につながるとされる地元の過激派マウテ・グループとアブ・サヤフが引き起こした事件は、兵士・警官165人、一般市民47人、テロリスト約1000人の合計1200人超の死者を出し、人口20万人のマラウィの市街中心部は壊滅した。

国内外の報道では「IS系勢力が東南アジア展開を目論んでミンダナオの拠点化を図った」と伝えられるが、そもそも両派にそれほどの実力はない。死亡した外国人戦闘員はマレーシア人、インドネシア人など40人程度。「中東からマレーシア人幹部経由で資金が入っていた」(政府軍筋)と言っても、戦闘員が中東から大挙送り込まれた事実はなく、IS系との“称号”はやや過大評価だ。むしろ、政府軍発表の「テロリスト1000人を殺害」の何割かは戦闘を強要された人質の住民、あるいはカネや薬物欲しさに加わった住民だったとの疑いが浮上している。

周辺町村を合わせて約40万人の避難民の帰還も大きな課題だ。ドゥテルテ政権は150億ペソ(約330億円)の復興予算を計上するが、本格的な復興・再開発には数倍の資金、そして少なくとも数年の歳月を要するのは間違いない。

ミンダナオ島では、今回の過激派とは別のイスラム主流派モロ・イスラム解放戦線(MILF)と政府による和平プロセスが進行中。政治的協議に加えて、一人当たり国内総生産(GDP)がマニラ首都圏の15分の1と極端に貧しいミンダナオのイスラム地域の経済開発も長期的安定のカギになる。

ジャーナリスト 中坪央暁