崩れゆく米比関係と、ウイルス禍でも強力な中国ハードパワー

フィリピンと米国の関係が音を立てて崩れている。1月末、ドゥテルテ比大統領は合同軍事演習などの根拠だった「訪問米軍に関する地位協定」(Visiting Forces Agreement (VFA))の破棄準備を決め、昨日11日に米国へ通告した。日本のメディアには、デラロサ比上院議員が米入国ビザ発給を拒否されたことへの反撃とする報道がある。また、実際の破棄までは180日あることから、フィリピン国内からは「今のうちに良く考えよう」といった空気もあるようだ。

国内では折しも、中国の存在感が一段と増している。電力網に加えて、中国一帯一路の一環である空港建設にほぼ100%資金持参で参画する予定。今回の新型コロナウイルス禍でも、中国・武漢経由者の入国制限が遅れたとして批判の的になっていた。10日に、入国制限を「台湾を含む」中国全土に広げたことも、この批判の補強材料になっている(台湾は猛反発)。

今回のウイルス拡散でも、あるいはそれを機に、一方の中国は周辺国へ見えざる圧力を強めているように見える。中国軍爆撃機は9日、沖縄へ飛来し自衛隊機が緊急発進しているし、台湾国防部は9日、10日と連続してスクランブルをかけた。中国公船の尖閣諸島沖接続水域侵入に至っては11日間連続である。カンボジアのフンセン首相は、後継と目される息子Hun Manet氏と北京を5日に訪問、習主席と硬い握手を交わした(武漢訪問は果たせなかった)。

米外交評議会のRichard Haass会長は11日、ワシントンポストに評論を寄せた。「(今回のウイルス禍によって)中国の成長が阻害される事態に米国は準備する必要がある。(国内批判をそらすために)習政権は本筋から外れてナショナリズムに訴え、台湾や香港へ圧力を強めるかもしれない。あるいは国内締め付けに走るかもしれない。確かなことは、中国は予想し難いということだ」(抄訳)。

フィリピンが中国になびく姿は、後者の強力なハードパワーがウイルス禍でも問題なく機能していることを示している。(写真は2016年10月20日の両首脳会談時、フィリピン政府公開。)

(Hummingbird Advisories  佐藤 剛己)