洪水を悪化させた森林伐採

10月上旬にベトナムを襲った熱帯低気圧は、北部と中部で死者・行方不明者100名以上を出し、過去数年で最悪の自然災害となった。ただベトナムメディアの間では「森林伐採が引き起こした人災」との批判が高まっている。

この熱帯低気圧による降雨量は、中国国境に近い山岳部では2–3日で500ミリという記録的な大雨となった。異常な大雨は気候変動の影響と見られている。ただ嵐による死者は6人にとどまり70人以上は鉄砲水や土砂崩れによる。天然資源環境省の幹部は「被害は人の手によって悪化した」と認め、原因として流域の森林伐採と原生林が穀物に取って代わられたことを挙げている。

ベトナムは国土の41%にあたる1430万ヘクタールが森林におおわれている。ただし、うち400万ヘクタールは再植林で天然林は減少を続けている。中央は取り締まりを命じているが、地方ではリゾート施設や小規模な水力発電所の整備を目的とした伐採が止まない。違法伐採は今年だけで1700件も報告されている。

気候変動の影響を森林破壊が増幅し、その森林破壊がさらに気候変動を進める悪循環が起きている。「我々は高い代償を払っている。これから何年も払い続かなければならないだろう」。農業農村開発省の防災担当者の言葉が重く響く。

(ベトナムウオッチャー 杜明英)