ミャンマー政権、深刻化する軍との駆け引き

ロヒンギャ問題や武装少数民族への対応で対立を深めるミャンマー政権と軍。軍側が更に喧嘩をふっかけてきている。直近の軍の記者会見で軍側が問題視したのは、国家安全保障に関する最重要課題を議論し政策決定をする「国家防衛安全会議(National Defense and Security Council、NDSC)」が、アウン・サン・スー・チー国民民主連盟(NLD)党首(国家最高顧問兼外務大臣兼大統領府大臣)率いる現政権の発足(2016年)後、一度も正式に開かれていないことだ。国家安全保障に関わる重大会議だから、きちんと定期的に開かれるべきと言うのが軍の主張だ。

NDSCのメンバーは大統領、副大統領2人(1人は軍が任命)、議会上下院議長、軍司令官と副司令官、外務大臣、軍が任命する国防、内務、国境の3大臣。11人のうち過半数の6人が軍所属または軍任命だ。軍に過半数を握られている限り、政権側としては開催したくないのが本音だろう。

スー・チー国家最高顧問は、安全保障・平静・法の支配委員会(Security, Tranquility and Rule of Law Committee)と呼ばれる安全保障会議を2016年4月に行政命令で発足し、何度か招集している。メンバーには国防、国務、国境大臣を含む主要大臣と警察長官や司法長官などが含まれているが、軍司令官と副司令官は含まれていない。

これに腹を据えかねたのか、軍任命の145人の議員と前政権の連邦団結発展党(USDP)議員が一緒に9月20日、憲法改正案を連邦議会に提出した。改正案では、NDSCを月に一度開くこと、NDSCメンバーのうち5人が要請すれば緊急会議を開くこと、また立法と行政の抑制と均衡が悪化した場合や上院か下院の3分の1が空席になった場合はNDSCが大統領に議会の解散を提案できるとされている。現憲法上、軍は議会の4分の1の議席を与えられ、それにUSDPの議席数を合わせると上・下院の3分の1をコントロールしていることになる。

国内で不安定な状況を抱える中、来年の総選挙を控え、政権と軍の駆け引きは激しさを増している。(写真はネピドーの政府建物群。2013年11月撮影)

(Hummingbird Advisories 白新田 十久子)