東南アジアから見える日本のSDGs議論

日本で参院選挙が明けた22日、外務省が新たに設けた「SDGsの達成のための新たな資金を考える有識者懇談会」の初会合があった。河野太郎外務大臣も出席した。懇談会の目的は「SDGsの達成に必要な資金を確保するために、革新的資金調達について」議論する、というものである。有識者委員として懇談会に加わる方々も企業実務家というよりは、研究者、銀行家、コンサルタントという面々で構成されている。国連の調査でも、SDGs達成には特に途上国を中心に多額の投資が必要とされ、外務省の懇談会設置はその流れに沿ったものといえる。

しかし日本の産業界では、掛け声ほどSDGsは根付いていない。個別会社でSDGs憲章を作ったものの、具体的な施策が定まっていない、というケースは多く見られる。世界的なチャリティ団体在京代表によると、「日本企業のおじさんは、みんな嬉しそうにバッチはつけますよ、あの17色の。でもお金は出さない。本部のロンドンからも『日本企業はどうなっているんだ』と呆れられている」。ある企業のSDGs担当者からは「チームを旗揚げしたけど、予算が付かないからプロジェクトができない。過去にやった関係ないものを後付けして、いかにもやったように宣伝している」という状況だ。

政府には、2018年6月設立の「SDGs推進本部」、さらに経済産業省が同年11月に作った「SDGs経営/ESG投資研究会」がある。経団連も昨年7月に特設サイトを作り、理念周知や事例紹介などを行なっているが、こちらは、金融と技術を融合したサービス紹介が多く、必要とされる国へそのまま移入できそうなものはほとんどない。

SDGsの出発点は、特定国や企業による不当利得を得る仕組みが、進出した相手国の社会を壊していく、だからその仕組みを変えようというもの。ミャンマーでエイズに罹患した親から生まれた子どもたちをどう養育するか、インド山奥の電子ごみの捨て場問題をどうやって解決するか、日本の下請けとして気温40度にもなるエアコンのない工場で働く妊婦の状況をどう改善するか、等である。だからこそ、贈収賄防止と人権擁護がSDGsの柱になっている。これらは企業の短期利益には直結しないから、大企業にこそ期待される部分だ。

世界的な食品大手ネスレが、原材料買い付けから消費者販売までを一つのブロックチェーン(QRコードではない)でつなげて追跡可能にする実験をしている。ノルウェー政府年金基金は、大量破壊兵器と少しでも関連のある先には絶対に資金を出さない。SDGsにつながるのは、こうした企業の政策決定だ。

日本のSDGsの取り組みはテクニカルになりがちで、どんどん本筋から離れているように見える。

(Hummingbird Advisories  佐藤 剛己)