政財混濁のリスク(フィリピン)

先週来日したフィリピンのドゥテルテ大統領が、5月31日の安倍首相との会談に先立つ29日、多くの日本企業トップと会談。26案件(総額55億米ドル)で双方署名となった。首脳の往来には財界からも大勢が動員されるのが恒例で、今回も三菱、三井の名を冠する複数企業や大手商社などが新規事業合意書にサインした。フィリピン側からは大手不動産開発DMCI、マグサイサイ・グループなどが参加した。こうした場への参加者は、滅多に発表されないが、相手国の発表を見ると詳しく出ている。ドゥテルテ大統領は同時に、企業側にフィリピン投資のスピードアップ(「fast-track implementation」)を求めた。

が、フィリピン投資はなかなかスピードアップしないのがこれまでの常だ。同国が市場として数々の魅力を持つのはその通りだが、経済規模の割にインフラが悪い。お役所書類は相当程度が電算化されておらず、国土が小さな島の集積という点でモビリティの課題もある。

加えて国内財界の風潮も、進出国側には与しにくい。経済利権のために政治へ進出する、という姿勢が他国よりあからさまなのだ。某日系企業が投資を検討した先は、数々の汚職を追求されたアロヨ・元大統領の一派として利権を貪っていたが、今ではアロヨ氏と一緒にドゥテルテ氏の政党に合流。かつての批判をかわして、現在党要職を務め、次期総選挙に出馬の勢いだ。別の案件では、フィリピン側対象企業の一族(本人や妻、息子、義理の娘)が、出身地でもないあちこちの地方首長に立候補、当選して市の利権を牛耳る例もあり、その露骨ぶりはさながら「事実は小説より奇なり」。

誰がなんと言っても投資にリスクはつきものだ。

(Hummingbird Advisories  佐藤 剛己)