マレーシア、マハティール政権の1年目

昨年5月に行われたマレーシアの総選挙でマハティール元首相(現在は現首相)率いる希望連盟(Pakatan Harapah、PH)が「新しいマレーシア(Malaysia Baru)」を掲げて勝利してから1年が経った。初めての政権交代以降、世論の評価はなかなか厳しく、マハティール首相の支持率は71%(昨年8月)から46%(今年3月)へ、希望連盟政府のそれは79%(昨年8月)から39%(今年3月)へと急激に落ち込んだ。マハティール首相自身も、政権1年の会見で、総選挙時のマニフェストにある464イニシアチブのうち53イニシアチブ(11.42%)が達成され、283イニシアチブ(60.99%)が計画段階にあるか未着手であると認めた。

しかしまだ1年目、「ちょっと評価が手厳し過ぎません?」と思っていた矢先、マレーシアのオンラインフリーニュースThe Sun DailyのTan Siok Choo氏の論評を読んだ。タン氏は、起こったことではなく起こらなかったこと、つまり4党混成の希望連盟が崩壊しなかったことが最も評価されるべきだと論じていた。タン氏曰く、総選挙で51%の有権者が希望連盟に投票したのは、支持からではなく、国民戦線(Barisan National、BN)への拒絶である。マハティール首相が過去の汚職と対峙し、汚職対策を優先する中で、前与党はクリーンになってきていて、現与党は前与党のクリーンなリーダーの育成の手伝いをしていることになる。そして、希望連盟が政権を維持するために最も重要なのは、マハティール首相が述べたように「shared prosperity(繁栄の共有)」で、その鍵となるのが、女性とスタートアップ企業などの中小企業だと論じている。タン氏はその上で、現政権の経済政策についての注文をつけている。

1年目の希望連盟政権は、汚職に財政不正、マレー人への過度な優遇政治など、前ナジブ政権の負の遺産の片付けに追われた感は否めない。マレー優遇政治に関しては、それを利用した野党の動きもあり、なかなか優遇制度廃止には至っていない。「繁栄の共有」の鍵に女性と中小企業が含まれるのはタン氏の言う通りだろうが、やはり重要な点は古い経済体制との決別だろう。マハティール首相も述べているが、公共事業、負債、一部の大都市の繁栄で支えられているような状態では国全体の繁栄につながらない。労働者のスキルアップ、スタートアップの奨励とそのためのビジネス環境と制度改善と支援、女性の社会進出支援など、様々な対策が求められる。

マハティール首相があと何年職務を続けるかは分からないが、その間に膿を出し切り、新しい経済による「繁栄の共有」のための基盤を築き上げることを望むばかりだ。

(Hummingbird Advisories 白新田 十久子)