ハマスのサイバー拠点攻撃とシンガポール

イスラエル軍が5月5日、ハマスのある拠点を攻撃したことが安全保障関係者の間でちょっとした議論になっている。イスラエル軍の発表(写真はTwitterから)によると、拠点は「HamasCyberHQ.exe」、つまりイスラム国家樹立を目指す武装組織ハマスのサイバー攻撃拠点。サイバー攻撃拠点に地上軍が応戦するには拠点特定の困難さがつきまとっていたものの、専門家からは「時間の問題」とされていた。しかし、実際に政府機関がサイバー攻撃に対して地上戦で応戦したことを認めたのは事実上初めらしく、今後は類似の戦闘パターンが増えるだろうとも指摘されている。

サイバーとイスラエル、といえばシンガポール。リー・クアンユー元首相(2015年3月23日没)が自著で認める通り、もともと建国時から自身の諜報機関をイスラエルのモサドに範を得たのがシンガポールである。今でも、サイバー・インテリジェンス能力構築を支援するのはQuadream、Candiruなどイスラエル企業が多い。シンガポール政府系ファンドのテマセクは昨年10月、イスラエル軍の諜報部隊出身者が90%を占めるとされるサイバー系コンサルティング会社Sygniaを2億5000万米ドルで買収した。

報道は極めて限られ一般には判りにくいが、シンガポールがサイバー対策に国家の総力を挙げていることがうかがえる。周辺国の元軍関係者と話していると、「シンガポール軍の能力は東南アジアで頭抜けている」と評する所以になっているようだ。

その「仮想敵」はどこか、と言えば、それは最後まで明らかにならないだろう。が、シンガポールのサイバー能力増強は「危機がそこにある」ことを示している。

(Hummingbird Advisories  佐藤 剛己)