石炭火力、東南アジアと日本企業の提案力

中米コスタリカが、2050年までに化石燃料の使用を完全に辞める計画を進めている。2月に大統領に就任したカルロス・アルバラド・ケサダ氏のインタビューを掲載したWIRED4月9日版(日本語版)によると、成功すれば「世界で初めて国レヴェルでのゼロ・エミッションの達成」。人口500万弱の国の行動は「人類に何ができるかの見本になるかもしれない」と、大統領は話す。

一方で同じ日、日経新聞(電子版)は、環境や人権、腐敗に積極的ではない日本企業はESG投資の流れを受けて、非日系金融機関の投資対象から「外される」リスクが大きいと論じた。同記事は、マレーシアのプランテーション産業を引き合いに出していた。

反贈収賄と同じく、ESGやSDGsなどと経営のバランスに関する議論は多々あろうが、東南アジアだけを見ても日本企業は曲がり角に来ていると感じる。好例はやはり石炭火力(写真はイメージ)だ。日本企業は多くの発電所計画に関わり、複数箇所で大規模な地元反対運動に直面している。ベトナム・ギソンでは輸出技術が最先端のそれから劣後するとして批判を浴び、JICA支援のインドネシア・インドラマユの計画は当局による反対運動派「不当逮捕」をアムネスティ・インターナショナルに非難された。インドネシア・ボルネオの石炭採掘に伴う環境汚染では、在ジャカルタ日本大使館前の抗議行動がCNNなどに報じられた。日本企業は絡まないが、タイ南部ではクラビ、ソンクラー2か所の発電所計画が軍も出動するほどの反対運動から凍結に追い込まれた。

東南アジア各国には、再生エネルギーを積極的に取り込む財政的また時間的余裕に乏しく、短中期的には石炭火力にある程度頼らざるを得ない。日本企業が組む地元企業は先進各国に比べてESGやSDGsの実践に消極的で、地元の反対を生みやすいという側面も考慮すべきだろう。かといって、東南アジア唯一の原子力発電所、フィリピンBNPPの本格稼働を認容する土壌が国際世論にあるかというと、ここもまた怪しい。

こうしたジレンマを脱するために手はないか。地場の権益を掻っ攫う中国との差別化を図り、日本の国益に資するためにも、日本政府や企業にはESGやSDGsの視点が入った計画立案力、提案力、問題解決力が、東南アジアで求められている。同時にそれは、この地域に資することになるのではないか。

(Hummingbird Advisories  佐藤 剛己)