子宮頸がんワクチン・ガーダシル9、「なぜ日本では未承認?」

最近子宮頸がん(HPV)予防接種について近所のかかりつけ医(シンガポールのローカルクリニック)と話す機会があった。シンガポールでは欧米の国々と同様、三種類の子宮頸がんワクチンが承認されている。日本で承認されるサーベリックス(Cervarix)、ガーダシル4(Gardasil 4)に加え、日本未承認のガーダシル9がある。子宮頸がんを引き起こすウィルスは数種類あり、それぞれ効くワクチンが異なる。サーベリックスはタイプ16と18、ガーダシル4はタイプ6、11、16、18、ガーダシル9はタイプ6、11、16、18、31、33、45,52、58のウィルスによるHPV感染を抑えてくれる。

日本では子宮頸がんワクチンの副作用が心配され、敬遠する人も少なくないが、2013年には世界保健機関(WHO)が市販HPVワクチンの安全性に懸念がないことを再確認している。欧米やオーストラリアでは感染を幅広く防ぐガーダシル9を承認、その接種を推奨している。また、HPVワクチンは男性のがん予防にもつながるとされており、アメリカやオーストラリアでは男女両方の接種を薦めている。

シンガポールでは9歳から26歳の女性の接種が推奨されている。高額な事で知られる子宮頸がんワクチンだが、サーベリックスとガーダシル4の接種にはシンガポール国民と永住権保有者なら、医療積立金制度MediSaveから500シンガポールドルまで使うことができる。15歳未満の接種は2回、15歳以上の接種は3回で、それぞれ3回接種したとして、サーベリックスは約360シンガポールドル(約2万9千円)、ガーダシル4は約450シンガポールドル(約3万6千円)、ガーダシル9は690シンガポールドル(約5万5千円)かかる。日本では、ガーダシル9を個人輸入しているクリニックで接種できるが、1回3万円ほど、3回で9万円、シンガポールの約1.5倍かかる。

シンガポールでも子宮頸がんワクチンの接種は強制ではない。ただ日本と違うのが、副作用への心配から敬遠するというよりも、ワクチン接種が若い年齢からの性行為を促すことにつながらないかという懸念からだ。今年4月からは、中学1年生(13歳)のシンガポール国籍または永住権保有の女子学生は学校の予防接種プログラムの一環として無料で子宮頸がんワクチン(種類は不明)を受けることができるようになった。またキャッチアッププログラムとして、今年に限り、中学2年生から高校3年生まで無料で接種可能だ。

かかりつけ医によると、シンガポールでは子宮頸がんワクチンはすでに当たり前とされており、MediSaveが適用されるサーベリックスやガーダシル4よりも、コストはかかるが将来がんになる可能性を少しでも多く減らすことができるならと、ガーダシル9を選ぶ人も増えている。また、シンガポール滞在中の中国人がこぞってガーダシル9を受けており、そのせいで在庫薄となるクリニックも出ているらしい。日本で予防接種を好んで受ける中国人もいるらしいが、地理的に近く、値段も日本より安いシンガポールで、旅行ついでにガーダシル9を受けていく中国人も多いらしい。

日本でガーダシル9が未承認なことを話すと、かかりつけ医は椅子から転げ落ちるごとく驚いていた。「なぜ世界的に承認されているワクチンが先進国であるはずの日本では未承認なのか」と。接種するかどうかを決めるのは個人そして親だが、ワクチンの種類を限定し、国民の選択肢を狭めるのは国だ。すでにかなりの遅れをとっているが、選択肢の幅を広げ、将来国民がかかるがんのリスクを減らすことこそが、国民健康保健への負担を減らす道ではないか。

(Hummingbird Advisories 白新田 十久子)