マレーシア:国内でも続くISISとの戦い

シリアで最後のイラク・シリア・イスラム国(ISIS)支配地である東部バグズで掃討作戦が行われ、多くの戦闘員が投降する中、その家族の女性や子どもたちもシリア北部のアル・ホルキャンプに避難している。国連人道問題調整事務所(UNOCHA)によると、3月11日時点で、66,427人が避難しており、そのほとんどが女性と子供だ。

自国への帰国を望む声が報道される中、イギリス、アメリカ、ドイツなどはこれを拒否する一方、帰国希望者を受け入れる国もある。マレーシアだ。マレーシア警察の対テロ特別部隊の責任者によると、現在判明しているだけで51人のマレーシア人がまだシリアにおり、そのうち17人が子どもだ。2013年以降、マレーシア人102人がシリアに渡ったとされ、9人の自爆テロリストを含むマレーシア人40人がISISの支配地域で死亡したという。

命をつないだ51人のうち11人がすでにマレーシアに帰国、うちの8人(すべて男性)は有罪とされ、服役中だ。残る3人は女性と子ども2人で自由の身だ。さらに、帰国希望の13人に関してマレーシア政府は手続きを行っている。希望者は、帰国前後にマレーシア警察による徹底的な調査と取り調べを受け、1か月間のリハビリと脱過激化(de-radicalisation)プログラムを受ける。その中で聖職者や心理学者により、宗教的観念や心理状況についての厳しい検査も行われる。また、海外の諜報機関から得た情報も精査し、ISISの活動に何らかの形で関わっていた場合には、裁判にかけられる。

それだけ聞くと、厳格なプロセスを敷いているように聞こえる。しかし、2001年の米国同時多発テロの関係者とされ、長年米当局が追跡してきたYazid Suffatは、収監、再教育、保釈を何度となく繰り返し、その度に新らしいテロ集団を募っている(その度に米国の不興を買っている)。現在は収監中の身だが、今年半ばごろにはまた保釈される見込みだ。国民性と制度の限界がそこにあるのかもしれない。

ISISが物理的になくなったとしても、ISISの影響下にいた人の思想を完全に中立化するのは困難だろうし、過激思想に影響を受ける国民がいなくなるわけではない。マレーシア警察対テロ特別部隊の責任者は、ISISに居場所がなくなったISISの過激思想に共感する国民が、フィリピン南部ミンダナオのISISに関わる軍事グループに活動を移していると言う。マレーシアのISISとの戦いは、国内でも、そしてシリアから場所を移して国外でも続く。

(Hummingbird Advisories 白新田 十久子)