ミャンマーの土地に関する法改正と人権問題

ミャンマーの無占有地・休閑地・未開墾地管理法(Vacant, Fallow and Virgin Land Management Law, VFV法)が2018年9月に改正され、国民は農業関連産業用の無占有地・休閑地・未開墾地を今年3月1日までに登録することが義務付けられた。政府は国営メディアを通じて国民へ通知を繰り返すが、特に地元民族居住地域では改正法の指示に具体性が欠けることに戸惑いが広がっている。

改正法の第30条aとbは、(a)地元民族が慣習的に保有する土地及び(b)宗教的場所・社会経済的建物や道路を含む公共の土地は、登録が必要とされる土地に含まれないと記している。が、長年共有し、かつ所有する土地を巡って官僚機構と、これまでもややこしい協議を強いられてきた先住民にとっては、今回の改正法が「慣習的に保有する土地」をどう規定するのか明示がないことに不安を隠せない。

チン土地問題ネットワーク(CLAN)は先週、チン州の9つ全ての村のメンバー合わせて、改正法の即時破棄を政府に求めた。CLANの報道官は、チン州の土地はチン族全てのもので、今回の改正法は民族の中で無駄な衝突を引き起こす、と話した。また、昨年12月には、カレン民族同盟(KNU)も、改正法は、土地に関する政策は国家平和会議で草稿されると規定している停戦協定(NCA)に反するとして、こちらも即時破棄を求めた。多くの先住民たちは、今までそうしてきたように、土地の共同保有、コミュニティーの森林・野生動物保護地や慣習的土地での輪作をそのまま続けることを望んでいるようだ。

またミャンマーでは、度重なる紛争で避難を強いられている国内避難民(IDP)が多くいる。国連人権問題調整事務所(UNOCHA)の今年1月の調査によると、カチン州とシャン州では、約11万人が避難生活を強いられている。ラカイン州では、約13万人が現在自宅からの退去を余儀なくされ、タイとミャンマーの国境地域では約10万人の長期難民が避難、和平プロセスが進まない中、元の村に戻れないままだ。

これらのIDPは土地の登録をできないまま3月の期限を過ぎてしまう可能性が高く、知らないままに他の人や会社が自分たちの土地を登録してしまうのではないかと懸念している。カチン州では、中国の農業関連企業がすでに土地の権利を得たと広く報道されている。

政府・州政府は、地元民族やIDPの土地登録の問題は分かっており、その土地が無断で他人や企業によって登録されることは許されていないとしているが、慣習的な土地や実際にそこにいない人たちの土地がどこまで守られるか、疑問の声が相次いでいる。

東南アジアでは、日本企業が先住民の土地の権利問題に直面することがしばしばある。対話がうまくいかないと、SDG違反だとしてNGO等から叩かれる事態も生じている。ミャンマーで投資される際も、土地の権利関係の下調べは重要なデュー・デリジェンスの一項目である。

(Hummingbird Advisories 白新田 十久子)