中国主導のミッソンダム、右往左往のミャンマー政権

ミャンマー政府(前テイン・セイン政権時)が中国が支援するカチン州のミッソンダムプロジェクトの一時中断を決めてから7年が経つ。中国はこのダムプロジェクトを「一帯一路構想」の要の一つとしており、スー・チー政権が誕生してからもプレッシャーをかけ続けてきた。ここ数週間でその動きが活発化しており、昨年12月下旬には在ミャンマー中国大使がカチン州を訪問して現地の政党や社会活動グループのリーダーに会い、今月半ばには「カチン州の地元の人たちはミッソン水力発電プロジェクトに反対していない」という声明を在ミャンマー中国大使館が出した。地元の指導者達は即反発、中国大使館の声明は誤解を与えているとし、カチン人はプロジェクトが「永久的に」お流れになることを望んでいるとした。

スー・チー氏は、野党時代にはダムプロジェクトの契約書を公表すべきだとしていたが、政権について3年、公表の兆しは見えない。また、国民民主連盟(NLD)政権になってから、カチン州知事を含むプロジェクト見直しのための委員会が設立され、既に2つの報告書が出されているが、政府は公表しないままだ。

そんな中、スー・チー氏が今月22日に質問に答える形で、「前政権が認めたプロジェクトを、政策が合わないからと言って新しい政権が止めてしまったら、ミャンマーのことを信じる投資家がいなくなってしまう」と発言。このことが憶測を呼び、カチン州ではプロジェクトが地元民の声を無視して推し進められるのではないかと心配の声が上がり始めた。

29日からネピドーで行なわれている「Investment Myanmar Summit」の会議では、投資・外国経済関係担当のタウン・トゥン大臣が火消しに回り、現時点では何も決定されていないと明言した。政府は「中国との関係を大切にしており、どうにか解決策を探したいと思っている」と正直に答え、ダムの規模縮小や場所の移転、また他の代替プロジェクトの開発も視野に入れているとした。

ダムの建設予定地が地震断層線上にあり、集水地域がシンガポールの国土の2倍というリスクの高い壮大なダムプロジェクトだが、地元の自然や文化・歴史的遺産を飲み込み、多くの村民が移住を余儀なくされることもあり、地元の反対は変わらない。

スー・チー氏自身がミャンマー一帯一路委員会のトップを務めるが、はてさてミッソンダムという要のプロジェクトに関してはなかなか難しい舵取りを迫られている。決断にはまだ時間がかかりそうだ。

(写真はヤンゴン中央駅近く、雑草に埋もれるレールがインフラ整備の必要性を物語る。2016年8月23日撮影。)

(Hummingbird Advisories 白新田 十久子)