世界に広がるミャンマー・シャン州産の覚醒剤の脅威

先週土曜日(1月11日)、マレーシア警察が二つの密売組織の取り締まりを行い、約600キロの覚醒剤を押収した。昨年5月にマレーシアで過去最大の約1.2トンの覚醒剤が押収されたにもかかわらず、覚醒剤密輸の波が治まらない。どちらのケースも覚醒剤の出処はミャンマー北東部、中国と国境を接するシャン州。首都ヤンゴン経由でマレーシアのセランゴール州ポート・クランに運ばれてくる。

International Crisis Group (ICG)が先ごろ発表した「Fire and Ice: Conflict and Drugs in Myanmar’s Shan State」に詳しく書かれる通り、東南アジアで急激に拡散する覚醒剤のほとんどがミャンマーのシャン州で製造されている。東南アジアでは、マレーシアの1.2トンの他に、過去2年でインドネシアで1.6トン、タイで788キロ、西オーストラリアで1.2トン、メルボルンで0.9トンの覚醒剤が押収されており、全てがシャン州産だ。2017年だけで域内で25トン以上の覚醒剤が押収されているが、それもほとんど全てシャン州産だ。各国の覚醒剤取り締まりの厳格化と過去最大の取り締まり量にも関わらず、覚醒剤の価格は安定しており、押収率は10%未満とされている。ICGは、250トン以上のシャン州産覚醒剤が出回っていると見積もっている。

シャン州産覚醒剤製造に使われる原料物質は中国から来るが、中国側で検査をされることなく素通りでシャン州に入ってくる。シャン州はミャンマー軍の庇護のもと幾つかの民兵組織が覚醒剤経済と政治を仕切っており、ミャンマー側の国境で検査・押収される心配は皆無だ。もちろん、利益は民兵組織だけでなく、ミャンマー軍、そして覚醒剤の取引に関わる者全てに行き渡るとされ、覚醒剤ビジネスと汚職の悪循環は止まらない(写真は米司法省が2007年、メキシコの麻薬ディーラーから押収した2億米ドル相当を超える現金)。

ミャンマー政府が薬物対策に本腰を入れる必要があるのはもちろんだが、現政権にはそこに着手する動きも余裕もなさそうだ。中国は、自分たちは国内で徹底した薬物対策をしていると主張し、国境での取り締まりを新たに始める気配はない。

覚醒剤は東南アジアだけでなく世界に広がる問題。ASEANがより具体的な対策をミャンマーに求めていく必要がある。「メンバー国の政治に口を出さないのがASEANの原則」などと言っている場合ではない。

(Hummingbird Advisories  白新田  十久子)