三菱UFJのマネロン容疑からコンプライアンスの人手を考える

シンガポールに住む個人投資家数人と、昼食をご一緒した。金融当局(シンガポールではMAS)によるマネロン対策が極めて厳しくなり、資金移動や投資事業に、今まで以上に慎重にならざるを得なくなったとぼやいていた。「そんな取引してたらアメリカに入れなくなるぞ」という会話が飛ぶ。「日本ではマイナンバーがないと来年1月から口座を持てなくなるから、どうしようかなあ」との話も出た(「口座」は証券口座のこと。銀行口座と勘違いした筆者は恥をかいた)。いずれも外資系の金融マンだった方々だ。「日本の金融機関はKYC(”know your client”)が緩いけど大丈夫か」と尋ねられたので、「日本企業はルールはだいたいにおいて、しっかり過ぎるほど作り込む。KYCが問題になる原因はルールの運用もさることながら、だいたいは人員不足だ」と答えた。

その矢先の今朝、三菱UFJ銀行が北朝鮮のマネロンに絡んで米当局の捜査を受けていると、米ニューヨーク・タイムスの特ダネを皮切りに、盛んに報道が出始めた。同行ニューヨーク支店は2013、14年に米のイランやミャンマーなど当時制裁だった国を巡る取引で罰金5億6500万ドルを受けたところ。その後同行は監督官庁を、当時のニューヨーク州金融サービス局(DFS)から連邦局へ移管することを計り、2017年には米通貨監督庁(OCC)から承認も出た。が、DFSがさらなるマネロン調査の途中だったことから(ことを理由に)、DFSが同行を非難。コンプライアンス違反で制裁金を科すことを今年1月、NY連邦判事に要請していた。

今朝の報道は、この流れで米検察当局が「北朝鮮関連」として捜査(日系報道は「調査」としているが、英語ではinvestigationで同じ)していることを伝えたもの。米国では当局の縄張り争いや、銀行との相性もあるらしい。それでも事案は北朝鮮だ。同行が意図的にマネロンした可能性を排除すれば、やはり原因は「KYCが緩い」、つまりコンプライアンスへの人員不足ということになるのだろうか。

(Hummingbird Advisories  佐藤 剛己)